アコーディオン専門店 山本楽器 【名古屋】

ベースボタンが輸送中の衝撃で沈む事故の原因と対策

1.要旨

 アコーディオンを寝かせた状態(ベースボタンが上になった状態)で輸送すると、衝撃によってコードボタンが穴の中に沈んで上がってこない状態になることがよくあります。

ベースボタンにも2種類あり、120ベースの場合でシングル音を鳴らす外側2列のボタンとコード音を鳴らす内側の4列のボタンですが、沈んでしまう事故はコードボタンに起こります。またその多くは4列全部が沈んでしまうのです。

 そうなる原因と沈まないようにする対策について説明します。

2.原因

 ベースボタンを押して指をはなすともとに戻るのは、ベースボタンの一個ずつにバネが付いているからではありません。

 例えばCコードボタンを押すと、Cコードの音をだすためにC,E,Gの音の出口を塞いでいる3箇所のパッドを開く仕組みになっています。パッドにはバネが付いていて、コードボタンを押している指を離すとパッドが閉まって音が止まります。つまりコードボタンが戻るのはパッドのバネの力によるのです。

コードボタン一個で3個のパッドを開ける必要があるため、パッドのバネは非常に弱い力になっています。

余談ですが、7thコードやdimコードは4っつの音でできているので4音とも鳴って欲しいのですが3音しか鳴りません。その理由はMajor, minor の音が3音のため、同じ力で演奏できるようにしているためです。(またまた話がそれますが、C7でアコーディオンで鳴る3音はC,E,BbでGの音は鳴らず、CdimではC,Eb,Aの音でF#の音は鳴りません。鳴らない音はメーカーによって違うことがありますが、3音しか鳴らないことはどこも同じです)
・・・・・・と書いたら大先輩から古いEXCELSIORの80ベースは7thコードの4音全部鳴るよ、と指摘がありました。それで思いついて自分の愛器Dallapeを調べてみたら、これも7thコードは4音全部鳴りました。説明に困るのですが、これは例外と考えてください。

コード音を鳴らすパッドは音の数だけありますから全部で12個です。この12個のパッドについているバネでコードボタン全部(120ベースのアコーディオンだったらコードボタンは80個)を支えているのです。

ボタン一個を押す力を簡単な実験をして計ると150g位です。

バネ一個の力は150gの1/3の50g程度ということになり、12音全部のバネの力は12×50gで600g程度となります。

一方コードボタン自身の重量はボタンの下についている金属の部品を含め、一個 5〜6gで、80個全部では440g位の重量になります。すなわち、アコーディオンをベースボタンを上にして寝かせた状態にすると、ボタン全部の重量(440g程度)はバネの力(600g程度)よりほんの少し小さいだけですから、ちょっとしたショックで沈んでしまうことになります。

試しにアコーディオンを寝かせて、コードボタン全体を両手の手のひらで軽く押してみて下さい。ほんの少しの力で全部のボタンが同時に沈むことにびっくりすると思います。

下の写真は120ベースのアクション部分です。

ボタンの下の金属の棒にはオルゴールに付いているような突起が個ずつ付いていて、この突起で音を出すパッドに繋がる支柱を押して音を出す仕組みになっています。そして棒の先端は木枠の穴を通って固定されています。赤いフェルトが見えますが、これはストッパーでこれ以上押し込めないようになっていますが、いっぱいに押し込んだ状態は実は非常に危険な状態で、ボタンに強い力が加わると下に付いている金属の棒が変形して突起が前述のパッドから出ている支柱を乗り越えてしまうことがあります。

一旦乗り越えると元に戻りません。そして一箇所でも乗り越えるとアクションが連動しているので他のボタンまで沈み、次々にボタンが沈んでしまうのです。

3.対策

1)まずはアコーディオンを寝かせないことです。

  車に乗せて移動するとき近距離でも寝かせるのは危険です。

2)宅配便などを使うときは、寝かせないように「天地無用」とか、「この面を上面に」とか、「精密機器扱い」とかのシールをもらってべたべた貼ってください。

3)前掲の写真で赤いフェルトの箇所は溝になっていますが、アコーディオンを輸入するとここに段ボール紙を棒状に切って埋めてあります。これでボタンが動かないようになり、これが最強の対策です。

 この処置を素早く行うにはコツがあります。

アコーディオンをベースバンドが上になるようにヒックリ返し、ソファーや応接セットの椅子などの柔らかい椅子の背もたれに動かないように立てかけ、ベースバンドを外し、ドライバーで裏ブタの4箇所のネジ釘を外します。難しくありません。

こうすると前掲の写真のようになります。

ひっくり返すのは乱暴なようですが、この方が確実に作業できますし、ベースバンドの金具のネジをはめるときもこうしないとなかなかはまらないのです。

アコーディオンのベース部分の構造はアナログ時計の構造のように精密機械の傑作です。コード音を出す工夫だけでなく、ベースシングル音についても面白い工夫がされています。ご自分のアコーディオンです、ぜひじっくり見てやってください。

そして、安心のためにこの対策をお奨めします。


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